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アナルコ・アルカホリズム

「武蔵野五輪弾圧裁判に勝利しよう!五輪有罪!バクチク無罪!3・21関西支援連帯集会」 参加報告

 3月21日に大淀コミュニティセンターで「武蔵野五輪弾圧裁判に勝利しよう!五輪有罪!バクチク無罪!3・21関西支援連帯集会」が開催された。2021年7月16日に武蔵野市で行われたオリンピックの「聖火」セレモニーに対して、会場の周辺の路上で爆竹を鳴らして抗議をした黒岩大助さんが「威力業務妨害」として逮捕・起訴されるという弾圧事件があった。この集会は黒岩さんの抗議行動を全面的に支持するとともに、これからの裁判闘争を含めた反弾圧闘争をたたかう仲間たちに連帯するため、釜ヶ崎トロールの会と自由労働者連合の共催で開かれた。

 集会は自由労働者連合のMさんの集会基調読み上げからスタートした。(1)なぜ黒岩さんは東京オリンピック開催に対して抗議をしたのか、冒頭陳述などによって明らかとなった理由の確認、(2)爆竹を鳴らすことによる東京オリンピックへの抗議が、イベント会社の業務妨害へとスリ替えられて国家権力により弾圧されたことの不当さ、(3)「平和の祭典」を騙って国威発揚ナショナリズムを煽ることによる、世界の労働者民衆を国民国家へと分断するオリンピックそのものの欺瞞性、の3点の問題を明らかにし、結集した多くの参加者の拍手によって支持された。

 次に弾圧の当該である黒岩さんが登壇した。ここでは近代オリンピック・パラリンピックの起原と過去のオリンピックにともなった戦争、虐殺や弾圧が確認され、官民が一体となってオリパラ開催という「例外状態」に便乗した政治プロセスの形骸化やセキュリティ強化がなされるという新自由主義的政策の実行(祝賀資本主義)への批判がなされた。特に「聖火リレー」は1936年にナチスドイツが開催したベルリン大会によって開発されたというナショナリズム扇動の意味合いをもつこと、ベルリン大会後にはナチスドイツが「聖火リレー」のコースを逆進する形でオーストリアズデーテン地方に侵略を進めたという歴史があることの振り返りによって、オリンピックが「平和の祭典」だとして象徴的に開催される「聖火リレー」のまやかしを明らかにしたことが印象的である。

 黒岩さんのあとには釜ヶ崎トロールの会のKちゃんが登壇し、ナチスドイツが開催した1936年のベルリンオリンピックの欺瞞性と、それに対する抵抗闘争の振り返りをした。ユダヤ人の排斥を公然とアピールし、ニュルンベルク法によってユダヤ人の政治的な諸権利を剥奪したナチスドイツが、国際批判の高まりへの懸念から一時的にもユダヤ人迫害を緩めた。ナチスドイツとゲルマン民族の威信を発揚するためのプロパガンダ装置としてのオリンピックを否が応でも成功させるためには、人種差別的政策と反政府活動家に対する人権侵害を一時的にでもやめなければいけなかったのである。これはアメリカやスペインをはじめとする国のボイコット運動や国内におけるナチスへの抵抗闘争が起因している。もちろんこの「民族の祭典」の大成功のあとにはユダヤ人やロマ族に対する迫害や反政府活動の取り締まりの強化がなされたことは言うまでもない。

 一時休憩のあとには明治大学田中ひかるさんが登壇し、スペインのバルセロナで開催される予定だった人民オリンピックにかんする講演がなされた。バルセロナ人民オリンピックは1936年のベルリン大会に対抗するために準備され、この大会ではIOCが主催するオリンピックは軍国主義と戦争を助長しスポーツが軍事や戦争動員に悪用されることへの批判、そしてスポーツのもとで世界中の人民が団結して平和と文化の促進を求めるという意味合いがあった。反ファシズム人民戦線のもとで準備された人民オリンピックにはカタルーニャ自治政府やスペイン共和国政府をはじめとしたさまざまな国から支援が送られ、またバルセロナを中心に展開する自主独立精神とアナキズム運動によって支えられていた。結果的に開会式の2日前に蜂起したフランコ反乱軍に対する闘いにはじまるスペイン内戦によって人民オリンピックは中止となってしまったが、こうした民衆による文化的運動によってファシズムに対して抵抗することが可能であったということは、現在にもわたって重要な意義をもっている。

 質疑応答ではあらためて五輪弾圧が不当であることとこれからの裁判闘争の重要性が確認され、黒岩さん本人が「威力業務妨害」によって逮捕・起訴されたことに対する思いや爆竹によって抗議したことの意味を語った。そして最後の個人・団体アピールでは関西を中心として活動する団体の最近の情勢報告がおこなわれ、ロシアのウクライナ侵攻に対して民兵として戦っているアナキスト大隊・レジスタンス委員会やアナキスト・ブラック・クロスの後方支援といった海外の活動の共有がなされた。集会は終始和やかな雰囲気で進められた。

 オリンピックは「五輪貴族」と呼ばれるような一部の特権的身分がますます肥え太るための装置であり、このようなメガイベントを開催することによる国民国家への統合と「反対派」分断の策動である。このことはオリンピック後であってもNHKの「河瀬直美が見つめた東京五輪」なるインチキ番組で反対派はカネで動員されているとするデマゴーグを流してまで貶めようとすることからも明らかであり、ますますオリンピックによる民衆の分断は深められている。どこそこの国がメダルを何個取っただとか、どのアスリートが好成績を残しただとかいった情報がテレビ・ラジオ・インターネットなどを通じて喧伝され、民衆は歓喜の渦へと無理やり放り込まれて熱狂的にオリンピックに追従することを余儀なくされる。そしてこのオリンピック・フィーバーの裏では都市再開発や野宿者の排除が着々とすすめられ、国家と資本によるジェントリフィケーションはさらなる脅威となる。国威発揚ナショナリズムのためのオリンピックによって民衆はこれ以上振り回されてはならず、また黒岩さんに対する弾圧攻撃も許してはならない。そして東京オリンピックの次には2025年の大阪万博や2030年の札幌オリンピック招致といった「祝賀」が用意されている。こうしたメガイベント開催をはじめとする民衆の抑圧に対して徹底的に闘っていかなければならない。

 

五輪有罪!バクチク無罪!

 

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